不登校の中学生を持つ親があきらめを感じた時の心の整え方と家庭対応を解説

中学生で不登校の子どもがいる親は、子どもの人生や将来はどうなるのか、勉強してない期間の影響は何か、親が諦めたらどうなるのかという切実な悩みがあるでしょう。

さらには、現実には、不登校を受け入れられない親の戸惑いや親の苦しみが重なり、何から手を付ければよいか分からなくなることが少なくありません。

そこで本記事では、不登校になりやすい親の特徴や突然不登校になる理由を理解したり、不登校の中学生の家での過ごし方を整える具体策を解説したりします。

さらに、親が諦めてはいけないことを軸に、進路選択の選び方のコツやNG対応を整理し、相談できる支援機関の活用法までを網羅します。

不登校の中学生を持つ親があきらめる気持ちを整理

突然不登校になる理由を整理

突然の不登校は「急に何かが起きた」ように見えても、実際にはさまざまな要因が少しずつ蓄積し、ある時点で限界を迎えた結果として表面化することがあります。

身体的要因、心理的要因、対人関係、環境要因、学習状況などが複雑に絡み合い、子ども自身が状況を言語化できないまま、学校に行けない状態に至るケースが多いでしょう。

特に思春期は、自律神経の不安定さやホルモンバランスの変化により、心身の揺らぎが起こりやすい時期です。

この時期に起こりやすい以下の状態は、「怠け」ているのではなく、心身がオーバーヒートしたサインである場合が多いです。

• 睡眠リズムの乱れ
• 頭痛や腹痛といった身体症状
• 集中力の低下

さらに、不登校は一つの原因に絞られないことが多く、以下のレイヤーに分けて整理すると理解しやすくなります。

不登校の要因を整理する視点

レイヤー	内容
身体的要因	睡眠不足、体力低下、慢性的疲労、起立性調節障害など
心理的要因	自己肯定感低下、不安、プレッシャー、感情調整の難しさ
人間関係	友人トラブル、教師との相性、所属グループの不安定さ
学習・学校環境	成績不振、提出物プレッシャー、教室の刺激過多
生活リズム・家庭環境	昼夜逆転、ルール不安定、家庭内コミュニケーションの変化

文部科学省が公表している不登校に関する調査でも、不登校の背景には複合的な要因が影響することが示されています（出典：文部科学省「不登校要因調査報告書」）

原因を一つに決めつけると、状況を単純化しすぎてしまい、見逃される支援ポイントが生まれてしまいます。大切なのは「何が悪いのか」ではなく、「何がつらかったのか」「何が力を奪っていたのか」を丁寧に見ていくことです。

その上で、心身を回復させるための「安全な生活リズム」と「安心できる家庭環境」を整えることが、再び動き出すための基盤となります。

不登校を受け入れられない親

親が子どもの不登校を受け入れられない気持ちは、ごく自然な反応です。愛情があるからこそ「どうにかしてあげたい」「元の生活に戻ってほしい」という願いが生まれます。

しかし、思いが強いほど、思い通りにならない現実に対して苦しみや焦りが大きくなり、親子の関係に緊張が生まれることに注意が必要です。

ここで大切なことは「すべてを事実として受け止める姿勢」です。現状を一度フラットに見ることで、今の子どもにとって必要な支援や環境の調整が見えやすくなるのです。

受容は「放任」とは異なる

現象	対応	効果
受容	今の状態を事実として理解し、必要な支援を考える	親子の信頼を維持しつつ、ゆるやかに回復を支える
放任	関わりをやめ、子どもの状態に無関心になる	子どもが孤立しやすくなる危険性がある

「学校に戻る」という目標だけが回復ではありません。家庭での穏やかな対話、同じ空間で過ごす安心感、食事や睡眠のリズムなど、日常の再構築が何よりの基盤になります。

心身が回復すれば、自然と社会参加や学習意欲は回復しやすくなるため、親が焦りを手放して段階的に支える視点が求められます。

親が諦めたらどうなるのか

親が先に心を折ってしまうと、子どもは「自分はもうだめなんだ」と自己イメージを縮めてしまうことがあります。反対に、期待や焦りは手放しつつ、愛情と信頼を示し続けると、子どもにとって強い心理的支えになります。

ただし、支えるといっても「励まし続ける」「説得する」ことが良いとは限りません。親が過度に介入すると、子どもは「できない自分を責められている」と感じることがあるからです。

子どもへのアプローチで重要なのは、次の4つの支援軸を日々安定して整えることです。

• 生活リズム（睡眠・起床・食事の安定）
• 心身へのケア（運動や休息を含む）
• 子どもの話を評価せずに聞く姿勢
• 家庭を「安心して戻れる場所」にする意識

「諦めない」とは、力で状況を変えようとすることではなく、支援の姿勢を粘り強く続けることです。

この視点が維持されることで、子どもは少しずつ自分のペースで回復し、自ら次の一歩を踏み出す力を取り戻していきます。

不登校になりやすい親の特徴

不登校に関しては、子ども自身の気質や対人関係など「子ども側の事情」に目が向きやすいものですが、家庭における関わり方の特徴も、子どもの安心感や自己評価に影響を与えることが指摘されています。

ここで強調したいのは、親に「原因」や「責任」があるという意味ではなく、環境要因が回復や安定に影響するという視点です。

過以下のような場合には、子どもは家の中でも緊張を感じやすくなるため、注意が必要です。

• 過度に成果や結果を求める習慣
• 他の子どもとの比較が無意識に口に出る状況
• 親自身が慢性的に疲れやストレスを抱えている状態
• 家庭内での声掛けが「指示・注意中心」になっている場合

また、家庭のルールが日によって変わる、対応が親の疲労度によって揺れやすいといった「一貫性の揺らぎ」は、子どもにとって「何が安全で何が危険か」が分かりにくい状態をつくり、安心感を低下させてしまいます。

（出典：文部科学省「不登校児童生徒に関する実態調査」）

家庭内で生じやすい状態と影響の例

家庭の特徴	子どもに生じやすい反応
結果や成績への言及が多い	評価されることへの不安、自己否定感の高まり
親が慢性的に疲れている	表情や雰囲気に影響を受け、情緒が不安定になりやすい
指示や注意が中心で承認が少ない	失敗を恐れ、挑戦ができなくなる
ルールや対応が日によって揺らぐ	家庭が「安心して戻れる場所」になりにくい

改善の出発点は、親がまず自分自身を整えることです。十分な睡眠を確保する、信頼できる相談相手を持つ、情報の受け取り量を調整するといったセルフケアは、子どものためであると同時に、親自身の回復と安定に直結します。

親が落ち着きを取り戻すと、家庭の空気は柔らかくなり、子どもは再び「安心して力を蓄えることができる場所」として家庭を感じられるようになるでしょう。

不登校中学生の家での過ごし方

学校に通えていない期間は、何もしていない時間ではなく、心身を再び整えるための「回復の期間」として重要です。

学校で過ごすためには多くの刺激処理が必要であり、思春期の子どもは知らないうちに疲労を蓄積しやすくなっているからです。

まずは起床・就寝・食事といった生活のリズムを整えることが土台になります。生活リズムが安定すると、感情や集中の波が穏やかになり、日常の活動量も自然に増えていくでしょう。

元気が戻り始めた段階で、短時間の散歩やストレッチなど、負担の少ない運動を取り入れるよう心がけます。運動は自律神経の調整にもつながり、睡眠の改善にも役立ちます。

学習は無理に学校ペースに合わせる必要はありません。5分だけドリルや、興味のある内容をノートにまとめるなどで、「できた」という感覚を育むことが大切です。

また、ゲームやYouTubeなどの娯楽は完全に制限するより、以下のように使い方を一緒に整える方法が持続しやすいでしょう。

• ゲームや動画はタイマーで区切る
• 終わりに家事や会話を少し挟む

家での過ごし方は、再び外へ向かう力を蓄えるための「充電期間」として、重要となります。

親の苦しみと向き合う視点

子どもが学校に行けない状態が続くと、親は将来への不安や自責感で精神的に追い詰められやすくなります。これらは子どもを大事に思っているからこそ生まれる自然な感情です。

しかし、その感情を抑え込むと、焦りや怒りとして表に出てしまい、親子の関係が硬くなりやすい傾向があります。まずは、親自身が自分の不安を否定せずにそのまま認識することが大切です。

苦しいと感じるときには、信頼できる相手に話したり、同じ立場の親と交流したりすると良いでしょう。また、専門機関に相談することも有効であり、相談することは「弱さ」ではなく子どもを「支えるための準備」として大切です。

また、子どもの成長は「大きな変化」ではなく「小さなできた」の積み重ねで現れます。

親が整うことは、子どもの回復にとって直接的な支援です。親の回復が、子どもの回復を支える土台になるからです。

不登校の中学生を持つ親があきらめからの克服策

勉強してないと人生や将来どうなる

学習が止まっている期間があると、将来の進路に対する不安を感じやすくなります。しかし、学習は中断していたとしても、正しい手順で「再スタート」することが可能です。

まずは現在の理解度を確認し、どの教科・どの単元から手をつけるべきか整理しましょう。

次に、短時間の学習を継続することを優先します。毎日15分〜30分程度を習慣にすることで、自己管理能力や学びへの抵抗が徐々に軽減されていくでしょう。

理解が浅い単元では基礎に戻り、得意な部分から「成功体験」を積むことで、自信が回復しやすくなります。

将来の進路は中学時点で確定するものではありません。高校以降、通信制・定時制・専門分野からの進学など、多くのルートが存在します。（出典：文部科学省「高等学校における多様な学び」）

以下は、再スタート時に役立つ整理表です。

目的	やること	具体例
現在地を把握する	理解度の確認	簡易テスト・学校プリントを見直す
学習習慣をつくる	毎日短時間で取り組む	1日15分だけ机に向かうルール
自信を回復する	得意分野を先に伸ばす	好きな科目・興味のある内容から再開
学び直しに備える	基礎を反復する	映像教材・基礎ドリル・音読など

大切なのは「いつ始めるか」ではなく「どんな形で継続できるようにするか」です。

不登校専門の個別指導塾という手段もある

学習の再開に不安がある場合や、親が直接サポートすることが難しい場合には、不登校に特化した個別指導塾を検討することも有効です。

一般の学習塾と異なり、これらの塾は「勉強を教えること」だけを目的にしているわけではありません。不登校専門の個別指導塾では、次のような特徴が見られます。

• 登校刺激をしない関わり方
  「学校に戻す」ことをゴールに設定せず、子どもの今の状態に合わせて学習と生活リズムを整えるサポートを行います。
• 対話による心の負担の軽減
  学習に取りかかれない背景には、心の疲れや自己肯定感の低下があるため、まずは安心して話せる関係づくりが重視されます。
• 学習の再スタートの手順づくり
  どの教科のどの単元から再開するか、無理のない進め方を一緒に設計します。
• オンラインや訪問対応がある場合も多い
  外出が難しい時期でも、家庭内から学習が再開できる環境が整えられやすいことがメリットです。

また、不登校専門の塾は「成果を急がない」ことを前提にしています。焦りを感じやすい親にとって、子どもがゆっくり回復していくペースを尊重できる相手がいることは、家庭内の緊張をやわらげる助けにもなります。

以下に不登校の生徒に特化したオンライン個別指導の代表例を紹介します。

名称	概要
キズキ教育塾	不登校・高校中退などに対応する完全1対1の担任制。110分授業で、通塾・オンラインを自由に選択可能。学び直しと進路支援を一体化し、大学受験・定時制・通信制進学まで幅広く対応。
ティントル	不登校専門のオンライン個別指導。30分単位で授業を設計でき、録画による復習機能も備える。講師と専任サポートチームが連携し、学習支援とメンタルケアを両立する仕組み。

親が諦めてはいけないこと

子どもが不登校の状態にあると、親は将来への不安や無力感に苦しみやすくなります。しかし、手放してよいことと、手放してはいけないことを区別することが家庭の安定につながります。

手放すべきなのは、「期限を決めた登校期待」「他の子との比較」「完璧な親でなければならないという考え」です。

反対に、諦めてはいけないのは次の4つです。

諦めてはいけないもの	理由	関わり方の例
愛情と信頼	子どもの安心と安全基地になる	「大切に思っているよ」と言葉と行動で伝える
子どもの可能性	成長のペースは人によって異なる	小さな「できた」を一緒に確認する
親子の絆	絆は回復の基盤になる	行動結果よりプロセスを会話にする
親自身のケア	親の消耗は家庭全体に影響する	休息・相談・サポート先の確保

親が自分を整えることは「子どもを支える準備」です。親が安定しているほど、家庭は安心の場所へと戻り、子どもは再び力を蓄えやすくなります。

進路選択の選び方やNG対応

進路を考える際、多くの家庭が「高校選び」だけに注目しがちですが、進路は人生の一つの通過点に過ぎません。

中学卒業後のルートは、全日制高校・定時制・通信制・専門高校・フリースクール併用など多様化しており、「どの高校に行くか」ではなく「どのような生活リズム・環境なら子どもが力を発揮しやすいか」を考えることが大切です。

そのためにはまず、高校の先の姿をざっくり描いてみることが有効です。

また、出席扱いや成績評価の取り扱いは自治体や学校により異なります。必ず在籍校や教育委員会、希望先の学校に直接確認し、最新のルールを把握することが重要です。（出典：文部科学省「不登校児童生徒への支援について」）

ちなみに、進路選択で避けたいNG行動は次の3つです。

• 「今すぐ登校」に固執してしまう
• 「現状のまま」だけを前提にし、選択肢を狭めてしまう
• 子どもに決定を丸投げしてしまう

複数校の説明会に参加したり、実際に見学したりすることで、子ども自身が自分の環境を「肌で選ぶ」ことができるようにサポートしましょう。

よくあるNG	何が起きるか	代替案
期限を切って登校を迫る	反発や不安が高まり、再登校が継続しにくくなる	体調と生活を優先し、短時間の通室や見学から再開する
現状前提で選択を固定する	将来の可能性を家庭側が狭めてしまう	中長期の到達点から逆算して環境を段階的に整える
子どもに丸投げする	判断負荷が高く、停滞しやすい	情報を整理し、見学同行や対話で意思決定を支える
他者比較や叱責中心	自尊感情が下がり、行動エネルギーが失われる	過程を承認し、小さな一歩を一緒に評価する

以上の点から、進路は「焦って決めるもの」ではなく、「整えながら一緒に確認していくプロセス」そのものがもっとも大切になります。

相談できる支援機関の使い方

支援機関は、多様な役割と機能を持っています。例えば次のような選択肢があります。

選択肢	目的・詳細
フリースクール	生活リズム・学習・社会性の再構築
自治体の教育支援センター	訪問支援・適応指導教室
NPO・民間団体	家庭訪問・オンライン支援
ひきこもり地域支援センター	心理・就労準備・家族サポート
スクールカウンセラー	学校との橋渡し
学習塾・個別学習支援	苦手単元の再構築・学習の再獲得

これらの選択肢を活用するポイントは、次のようになります。

1. 目的の明確化
   　例：生活リズムの回復／学習の再開／外出の練習／進路相談など
2. 初回相談での相性確認
   　支援者と子どもの相性は非常に重要です。1回で判断せず複数回接点を持ちます。
3. 支援頻度と役割分担を明確にする
   　「家庭で何をするか」「支援機関で何を補うか」を言葉で確認します。
4. 費用・出席扱い・通所負担を早めに確認する
   　無理のない活動計画をつくるために必要です。

また、親の会に参加することは「情報面」と「感情面」の双方で役に立ちます。同じ立場の声を聞くことは、孤立感を緩め、視点を広げる助けになるでしょう。

池添素に学ぶ支援の視点

池添 素（いけぞえ もと）さんは、長年にわたり不登校や発達に特性のある子ども・その家族と関わってきた臨床心理士・家族支援の専門家です。

学校や福祉、医療、地域支援など複数の領域を横断して実践を行ってきた人物で、子どもだけでなく「親と家庭の支援」を重視している点が特徴です。

著書や講演では、親が一人で抱え込まなくてよい環境づくりや、子どもの「言葉にならない気持ち」を丁寧に受け止める支援の在り方を伝え続けています。

池添素が実践してきた支援の核にあるのは、「子どもと家族が安心できる土台をつくること」「対話を途切れさせないこと」です。特徴的な視点としては以下があります。

• 子どもの言葉にならないサイン（表情・生活の変化・沈黙）を丁寧に読み取ること
• 親が「良くしようと頑張りすぎて疲弊していないか」に目を向けること
• 家庭・学校・地域を対立させず「つなぐ支援」を重ねること
• 回復とは「できることが増える」だけでなく「安心して失敗できる場が増える」ことであると捉えること

支援は「何を指導するか」ではなく、「どんな関係を一緒に作るか」で成り立ちます。

この視点を家庭に落とし込むと、まず安全基地としての家を整え、次に小さな社会参加の機会を増やすことが大切です。さらに、子どもが自分で選んだ実感を持てるよう、問いかけを工夫しましょう。

以上を踏まえると、家族支援と環境調整の両輪が、回復の速度と持続性を高めると考えられるのです。

不登校の中学生を持つ親があきらめずに済む方法まとめ

・突然の不登校は複数要因が重なり回復条件づくりが第一歩
・受け入れられない感情は自然で事実認識への切り替えが要点
・親が諦めず愛情と信頼を示す姿勢が安全基地を強化する
・家庭の土台は睡眠栄養生活リズムと短時間運動の整備
・学習再開は得意領域から小さく毎日積む設計が要
・勉強してない不安は現在地把握と計画で可視化して解消
・比較や期限で追い込まずプロセス重視で前進を評価
・進路選択は高校の先の姿から逆算し段階的に決める
・見学や面談を複数校で行い実体験で判断の精度を上げる
・丸投げせず情報整理と同行で意思決定コストを下げる
・支援機関は目的と相性で選び役割分担を明確にする
・親の会や専門家の対話で孤立を減らし感情を整える
・池添素の視点は家庭を安心の拠点にする実務へ応用可能
・親自身のセルフケアを最優先にし関わりの質を保つ