不登校は悪くないと感じるための母親の心を救う具体的な方法

「不登校は悪くない」と検索する方の多くは、母親が原因なのか、母親のせいにする空気へどう向き合うかに悩んでいる方もいるでしょう。

「子どもを甘やかしすぎ」や「怠け者タイプ」といった言葉に傷つき、母親のうつやメンタル不調、さらに仕事との両立にも不安を抱えがちです。

そこで、本記事では、不登校になりやすい家庭の4タイプを偏見なく整理し、甘えているだけという短絡的な理解を避けて、子どもの対応方法を具体的に示します。

学校以外の居場所や相談先の活用まで含め、読後に肩の荷が少し軽くなる道筋を丁寧に解説します。

不登校は悪くないと知ることが救いになる

不登校になりやすい家庭の4タイプを解説

不登校をめぐる議論では、家庭を一律に「よい／悪い」に分類するのではなく、支援を考えるための枠組みとして理解することが有効です。

家庭にはそれぞれ異なる特徴や傾向があり、どこに負荷がかかりやすいかを見極めることで、支援の視点や接点を変えられるからです。

ここでは、4つの代表的なタイプと、それぞれの典型的な状態、そして支援のポイントを丁寧に解説します。

以下の類型は「この家庭がこうだ」と決めつけるものではなく、「こういう傾向がある可能性がある」「ここに注意すれば支援の糸口が見つかる」と考えるための参考地図と捉えましょう。

類型と支援の視点

類型	起こりがちな状態	家庭内での支え方の要点
過干渉／過保護が強い	子どもの自己決定機会が極端に制限され、不安定さが現れやすい	選択肢を複数用意し、子どもに選ばせる機会を設け、小さな成功体験を尊重する
心配・管理が過多	ミスを極端に避けようとする、失敗に対する恐れが強くなる	完璧性にこだわらず、過程や努力を重視する声かけへ転換する
ルール条件付けが強い	ご褒美や罰で行動をコントロールし、自己調整能力が育ちにくい	行動の意味を対話によって共有し、内発的動機（本人が意味を見出す動機）を育てる
放置・放任傾向	困り感が語られず、支援が後手化しやすい	日常のルーティンを親子で見直し、困りごとを早くキャッチする仕組みを持つ

これらの類型を理解して、その家庭がどの方向に振れやすいかを読み解き、時点ごとに変化をみながら支援を当てはめめていきます。

また、家庭・学校・地域が同じ方向を向くためには、支援の優先順位や役割が明確になることが助けになります。

負荷が起こりやすいポイントを洗い出し、「ここをゆるめられるか」「代替案を用意できるか」を話し合う基盤としましょう。

母親が原因と思われてしまう要因

母親が「原因」とみなされやすい構図は、家庭内・社会構造・言説文化が交錯してできています。ここでは、その構図がなぜ生まれるのかをほぐし、誤解と偏見を減らすための視点を整理します。

まず、母親が矢面に立たされがちな背景には以下のような要因があります。

• 子どもと接する時間が長く、家庭内情報が母親に集中しやすい
• 保護者対応、学校連絡、日々のスケジュール管理が母親中心になりやすい
• 歴史的・文化的な価値観（母親は子どもを守るべきという期待）が無意識に作用する
• 周囲からの何気ない言葉や比較、非言語的な視線が自責感を誘発する

しかし、子どもの不登校には多面的な要因が関与します。集団生活のストレス、学習ペースのミスマッチ、人間関係の葛藤、感覚過敏や体調不良、家庭外環境の変化などが複雑に絡み合うことが一般的です。

ここで、原因探しに時間を割きすぎると、親子関係や心の余裕が疲弊するリスクが生じるため注意が必要です。

支援の視点を「今、この瞬間のつらさを軽くすること」や「次の一歩をとる準備」に置き直すことが回復への近道となります。

こうした行動改善レベルの工夫は、母親を原因扱いから解放する意味でも有効です。

母親のせいじゃないと国も示している

教育政策・制度のレベルでも、母親を一方的に責める構図からの転換が進められています。

文部科学省は「不登校児童生徒への支援の在り方について（通知）」（令和元年10月25日）で、不登校を問題行動として判断してはならないという考え方を明示しています。

さらに、「学校に登校するという結果のみを目標にしてはならない」「子どもが自ら進路を捉え社会的自立を目指す」「学校外での学習・休養の必要性を踏まえる」という方針も提示しています。

加えて、最近では「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果を成績評価に反映できる」という新たな通知も出されており、出席や登校を中心とする枠を広げようという動きが制度面でも進んでいます。（出典：文部科学省「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果の成績評価について」）

これらの政策は、母親個人を責める論調を和らげ、家庭・学校・地域・行政が連携して多様な学びの選択肢を整える方向へと舵を切る材料になります。

家庭が引き受けすぎず、むしろ制度に基づいた支援を活用しながら動けると、母親が一人で背負わなくてよいという安心につながります。

甘えているだけではなく助けを求めている

「甘えているだけ」という言い方が容易に飛び交う中で、そうした表現はしばしば子どもからのSOSを見落とすきっかけになります。

学校に行けない背景には、以下のように目に見えにくい心理的・身体的な負荷が重く横たわっていることが少なくありません。

• 強い不安感
• 慢性的な疲労
• 対人関係のストレス
• 学習内容のズレ
• 感覚過敏
• 睡眠リズムの乱れ

文部科学省の調査報告によれば、不登校の主な要因として「無気力・不安」がもっとも多く挙げられており、令和4年度では、当該要因を挙げた例が全体の55.3％を占めたとの報告もあります。（出典：文部科学省委託事業 「不登校の要因分析に関する調査研究」）

子どもの行動として現れやすいシグナルには、以下のようなものがあります

• 朝になると体調不良を訴える（頭痛・腹痛・めまい等）
• 学校の話題になると話をそらす、あるいは話を避ける
• 日ごとの生活リズムが乱れ、夜型・昼型の移行が激しい
• 以前は楽しんでいた活動を選ばなくなり、限定的な遊び・趣味にとどまる

こうした行動は、単なる「怠け」や「わがまま」として片付けられるものではなく、むしろ身を守るために内側で処理した反応だと捉えると、接し方が変わってきます。

対応の第一歩として、安心できる環境を整えることが欠かせません。たとえば、日中の活動量を少しずつ戻すようなスケジュールを一緒に検討する、無理なく参加できる学びや遊びを選ぶ、一日の負荷を見直すなどの工夫です。

そして、子どもの進み具合に応じて活動をゆるやかに調整しながら、徐々に動き出す準備を整えていくプロセスが現実的となります。

学校以外の居場所が子どもを救う選択肢

学校環境が心理的に負荷を伴う場合、以下のような学校以外の居場所は子どもが安心して過ごしながら回復できる場として重要な役割を果たします。

• フリースクール
• 教育支援センター
• 地域学習スペース
• オンライン学習コミュニティ

ただし、在籍校とこれら居場所との対応については注意が必要であり、指導要録上の出席扱いが認められるケースもあるため、学校・教育委員会・施設側の連携が不可欠です。（出典：文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について」）

また京都市など一部の自治体や教育委員会では、フリースクール通所を「指導要録上の出席扱い」と認めている事例もあります。

居場所を選ぶ際のポイントとして、以下を重視するとよいでしょう。

• 通いやすさ（移動時間・交通手段）
• 本人の興味・関心に沿ったプログラム構成
• 活動の自由度・選択肢の幅
• スタッフとの相性やサポートの質
• 少人数制・安心感ある雰囲気

また、最初から毎日通うことを強要せず、週1回から始める、あるいはオンライン参加から関係を築くといった段階的アプローチが、子どもの負荷を過度に高めずに居場所へ馴染む助けになります。

学校以外の居場所を活用しながら、学校との連携を模索することで、子どもが社会や学びに関わる手段を広げつつ、安心できる支えを築いていくことが可能になります。

不登校は悪くないと感じるために母親ができること

甘やかしすぎではなく安心を与える力

「甘やかしすぎ」という言葉は、母親にとって非常に重く響くことがあります。しかし、子どもに安心を与えることと、甘やかすことはまったく異なります。

甘やかしとは、子どもの要求を無条件に満たし続け、結果的に自己解決の機会を奪う行為です。一方で、安心を与える関わりは、子どもが自らの力で再び立ち上がるためのエネルギーを蓄える行為となります。

たとえば、朝起きられない子どもに「どうして起きないの！」と叱責するのではなく、「今日は体がだるいのかもしれないね」と共感を示したうえで、「できそうな時間を一緒に決めようか」と選択肢を渡す。これが安心を与える関わりです。

重要なのは、子どもの「困っている根っこ」を丁寧に聴き取り、一緒に現実的な選択肢を見つけることです。

また、安心は「できたことを言語化して伝える」ことでも育まれます。「昨日より5分早く起きられたね」「今日はごはんを一緒に食べられたね」といった小さな肯定を積み重ねることで、自己効力感が芽生えます。

この小さな積み重ねこそが、再登校や社会的自立への足場になるでしょう。

日常の中でできる安心の与え方のコツを、以下に紹介します。

• 朝のルーティンを3つに絞り、見通しを立てやすくする
• 学校との連絡文を一緒に作り、心理的負担を減らす
• 活動時間を短く設定し、できた範囲をしっかり認める
• 「やらせる」ではなく「できた」を見逃さず伝える

感情面では、「つらかったね」「頑張ってみたんだね」という共感や、「今日は無理をしないで休もう」という休息の肯定も効果的です。これらの声かけは、単なる慰めではなく、安心の上に自律を育てる基盤になります。

怠け者タイプなんていないという視点

「怠け者タイプ」という言葉は、努力や成果を行動量だけで測る偏った見方を生み出します。しかし心理学的に見ると、行動が止まるのは「怠け」ではなく、「限界を超えたサイン」であることが多いのです。

たとえば、注意欠如多動症（ADHD）や自閉スペクトラム症（ASD）などの発達特性を持つ子どもは、環境刺激に対して過敏に反応しやすく、同じ課題でも他の子より消耗しやすい傾向があることが知られています。（参考：「ASD 児者の感覚の特性（過敏と鈍麻）に関する国内研究の動向」より）

また、子どもは「叱られる」「失敗する」「期待に応えられない」といった経験を重ねると、次第に挑戦する意欲が減少していきます。これを心理学では「学習性無力感」と呼びます。

つまり、「やらない」のではなく「できない」状態に追い込まれているのです。

そこで、行動が止まっているときこそ、環境と課題の設定を見直すチャンスと捉えましょう。

見直し項目	詳細
タスクの大きさ	1単位を細分化して「ここまでできたら終了」と設定
タイミング	集中力の高い時間帯を活かす（朝10分、夜30分など）
期待の伝え方	「やりなさい」ではなく「どこまでならやってみようか」
フィードバック	「結果」よりも「過程」や「工夫の部分」に注目する

こうした工夫によって、「やればできる」という感覚を取り戻すことができます。それは小さな成功体験の積み重ねであり、やがて「やってみよう」という意欲につながります。

怠けている子どもはいません。見えない疲労を抱えている子が多いだけであると理解しましょう。

母親のメンタルを守ることが子の力になる

母親のメンタルが安定していることは、子どもの安心の土台になります。家庭の中で最も長く子どもと関わる母親が心身ともに疲弊すると、子どもはその不安を敏感に察知するからです。

逆に、母親が「少しでも落ち着いて過ごせている」と感じるだけで、家庭全体の空気が柔らかくなり、子どもも安心します。

母親向けのセルフケアの基本は「休息・栄養・睡眠・信頼できる人とのつながり」です。家事を減らす・宅食を利用する・掃除を2日に1回にするなど、家事のハードルを下げても構いません。

母親が心を守る具体的な方法は、以下の通りです。

• 家事を外部化する（家事代行・宅配・冷凍食品などを活用）
• 家族と役割分担を見直し、「手伝ってもらう」勇気を持つ
• 一人時間を意識的に作り、好きな音楽や香りでリセットする
• 毎日5分だけでも、信頼できる人と雑談をする

メンタル面の不調が続くときには、地域の相談窓口や心療内科、保健センターなどを早めに利用することが推奨されています。

うつや不安症は特別なことではなく、心のエネルギーが減っている状態です。医療機関でのカウンセリングや薬物療法は、「元気を取り戻すための手段」であり、「弱さ」ではありません。

母親が自分を大切にする姿は、子どもにとって最良のモデルになります。「助けを求めてもいい」「無理をしなくていい」というメッセージを、母親自身の行動で伝えることが、子どもを支える力に変わります。

（出典：厚生労働省「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」）

母親がうつになる前に優先するセルフケア

日常のなかで「これはもしかして疲れのサインかもしれない」と感じる体調の変化は、うつ状態への予防の観点から無視できません。

たとえば、以下のような症状が数週間以上続くような場合は注意が必要です。

• 眠れない・寝つきが悪い・途中で目が覚める
• 食欲が著しく減退または亢進
• 涙もろさ
• 以前興味を持っていたことへの関心低下
• 強い自責感

こうした変化を感じたとき、まず優先すべきは「安全の確保」と「休息」です。日常生活のハードルを一時的に下げ、少しずつ心身を回復させる機会を設けましょう。

さらに、以下のような実践的なセルフケアが、うつ状態への悪化を防ぐ手立てになります。

セルフケア	詳細
睡眠衛生の確保	就寝・起床時刻を一定にする、寝る前のスマホ利用を控える、環境調整（カーテン・照明・温度）
食事の調整	過度な制限ではなく、バランスを意識した食事、軽いタンパク源や野菜を取り入れる
軽い運動・散歩	短時間（10～15分程度）から始め、深呼吸やストレッチを取り入れる
休息区間の確保	「何もせずぼーっとする時間」を日中に意図的に設ける
家事基準の見直し	日々の家事を見直し、優先度を下げたり外注可能なものを取り入れたりする

もしこれらを取り組んでも改善が見られない、または日常生活に明らかな支障が出ている場合は、早めに専門機関に相談することが望ましいです。

うつ病の治療ガイドラインでは、休養だけでなく、薬物療法や認知行動療法などの組み合わせが効果的とされています。（出典：日本うつ病学会治療ガイドライン）

また、投薬中は自己判断で中断せず、家族との情報共有やスケジュール調整を行うことが現実的な対応となります。

母親は仕事との両立に正解はないと知る

仕事と育児・家庭を両立させようとすると、多くの母親は「正しいやり方」が存在するかのように錯覚しがちです。しかし、最適なバランスは家庭構成、仕事の内容、地域の支援体制、子どもの状況などによって変わります。

まず職場でできる工夫としては、短時間勤務や在宅勤務（テレワーク）の導入、業務優先度の見直し、会議時間の制限などが挙げられます。

特にテレワークについては、労働基準法や就業規則上の扱いを正しく整備することが必要です。たとえば、通勤時間が不要になる分、時間の使い方を明確に区切ることが求められます。（出典：厚生労働省「テレワークガイドライン」）

家庭内では、仕事の前後に切り替え時間を入れる、夜の家事を最小限にする、家族や親戚、地域サービスを活用して家事・育児を分担するなどの仕組みを設計することが効果的です。

こうした調整を少しずつ積み重ねていくことで、母親一人に負担が集中する構図を変えていくことが可能になります。

さらに、政府・自治体レベルでも「仕事と生活の調和（ワーク・ライフ・バランス）」の支援策が進められており、相談窓口や助成制度の周知強化などの動きもあります。（出典：内閣府「仕事と生活の調和の実現に向けた取り組み」）

これらを有効に活用して、最適な仕事と家事の配分を決めていきましょう。

不登校の相談ができるサポート先を紹介

不登校の状況が複雑になってくると、一人で対応するのは大きな負荷となります。こうしたときこそ、第三者の視点や支援を受け入れることが、次のステップへの道を開きます。

以下に、代表的な相談先をまとめ、活用のポイントを整理します。

相談先の種類	主な役割	活用のポイント
学校（担任・生徒指導・養護）	子どもの在籍校での調整・配慮合意、出席扱いや学習形態の調整	連絡様式や頻度について予め合意し、親・学校双方の負荷を軽くする
教育支援センター・適応指導教室	学習支援、居場所提供、段階的復帰の調整	見学参加から始め、週1回程度から徐々に関わることを許容する制度を確認
フリースクール・地域居場所	興味ベースのプログラム、少人数環境、安心感の場所	複数の説明会や見学機会を設け、子ども自身が選択できる場を優先する
医療・心理相談	心身の状態評価・治療・継続フォロー	初回相談から治療計画を共有できる機関を選び、家庭との情報共有を進める
行政・相談ダイヤル	制度案内・関係機関連携支援	支援制度や補助金、関係機関を一覧化し、複数の窓口をケースに応じて利用する

頼ること自体が復調のスタート地点となることを忘れてはいけません。もしある窓口が合わないと感じても、それを切り替える判断もまた、自律的な選択です。

複数の支援先を併用しながら、自分と子どものペースで歩みを進めていきましょう。

不登校は悪くないことを理解するまとめ

・不登校は状態であり行為の問題ではないと理解する
・母親が原因という思い込みをほどき自責を手放す
・家庭の類型は責めるためではなく支援に使う
・甘えているだけではなくSOSの可能性を尊重する
・学校以外の居場所を安心の土台として検討する
・登校だけを目標にせず主体性の回復をめざす
・小さな成功体験を日常に組み込み自己効力感を育てる
・声かけは共感と具体の両輪で伝える
・生活リズムや連絡の型を整え負担を減らす
・母親のメンタルケアが子どもの安定を支える
・不調のサインは早めの相談につなげる
・仕事との両立は家庭ごとの最適解を探る
・支援先を併用し相性が合わなければ切り替える
・家族内で役割と情報を共有し孤立を防ぐ
・不登校 悪くないという視点が回復の道を照らす